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2017年04月30日

着物の格と種類について

着物の種類

着物の種類と格について

着物の格は、種類や模様付け、家紋、比翼付などによって大まかに分類することができます。

第一礼装着以外は、模様や柄付けによっては同じ種類の着物でも着て行ける場所など異なったりします。

格については、様々な考え方や地域性がありますので一つの目安としてご参考にしてください。

 

礼装着

特別な行事・儀式(結婚式)や公的な儀式など格式を重んじる場合に装う着物になります。

ミスの第一礼装は、花嫁衣裳や本振袖の五つ紋付です。

ミセスの第一礼装は、黒留袖の白染め抜き五つ紋付です。

 

準礼装着・略礼装着

第一礼装に次ぐ格のある着物。

結婚式の披露宴や卒業式、入学式、初釜、パーティーなどの行事に装うことができます。

 

普段着・外出着

普段着としてお洒落を楽しむことができる着物。

お買物、観劇鑑賞、パーティー、お茶会など気軽に装うことができます。

 

 

第一礼装着 女性の着物

打掛 うちかけ

白無垢、色打掛などの結婚式に用いられる花嫁衣裳。

 

黒留袖 くろとめそで  五つ紋比翼付き

既婚女性の第一礼装。西洋のイヴニングドレスに相当するものである。主に新郎新婦の母親、親族、仲人が着用します。

喜びを重ねるという意味合いで必ず略式の比翼仕立て(昔は、白下着)にし、白長襦袢、袋帯を着用します。

家紋は、日向紋五つ紋を必ずいれます。柄付は、江戸褄模様で衽から身頃にかけての裾にだけ柄が描かれています。袖、肩、胸などには柄はありません。

 

本振袖 ほんぶりそで

未婚女性の第一礼装。総模様で袖の丈が長いほど格が高くなります。

花嫁衣裳や成人式、披露宴などに着用することができます。昔は、黒留袖同様に白下着を着用(比翼仕立て)しましたが、簡略化が進み、比翼がなくても第一礼装とみなします。家紋も同様に正式には日向五つ紋をいれましたが、現在は家紋無しでも第一礼装とみなします。

 

本振袖(大振袖) 袖丈3尺3寸 約115㎝ 花嫁衣裳などは大振袖の場合が多い。
中振袖 袖丈2尺8寸 約105㎝ 成人式、結婚式に招かれる場合は中振袖が多い。通常は、中振袖が主流です。
小振袖 袖丈2尺3寸 約85㎝ 現在は用途としてあまりないと思います。

 

色留袖 いろとめそで 五つ紋比翼付き

染め抜き五つ紋をいれ、比翼仕立てにすると未婚、既婚女性の第一礼装として着用できます。婚礼では未婚の姉妹や親族が適し、式典などに着用できます。

宮中では、黒色は喪の色とされています。叙勲などで参内する際は、色留袖が第一礼装となしますので、五つ紋色留袖比翼仕立てにしてください。

また、色留袖は、三つ紋、一つ紋の家紋をいれ略礼装や社交着などとしても着用できます。柄付は、黒留袖と同様に江戸褄模様になります。

 

黒喪服 くろもふく 五つ紋

現在、告別式の際に着用する場合が多い礼装用の着物です。五つ紋の黒無地の着物に黒帯が正装とされる地域が多いです。かつては白喪服が一般的でしたが、洋服のブラックフォーマルという考え方が日本でも主流になりました。

喪服の小物は、帯揚げ、平組の帯締め、草履、バッグも必ず黒色を使用。長襦袢や塩瀬の半衿、足袋、下着などは必ず白色を使用します。扇子には「結界」という 意味があるため、喪主の夫人が持つことが多いです。以前は、白下着を重ねていましたが、「不幸が重なる」ことを嫌い、現在では殆ど重ねて着ることはありま せん。おそらく、この意味合いから黒共帯は、一重太鼓の名古屋帯を使用される地域が多いと思います。

通夜や四十九日などの法要に伺う場合は、色喪服と黒共 帯の準礼装の装いをする方が一般的であると思われます。長襦袢や和装小物なども正装と同じ考え方になります。

 

 

準・略礼装着 女性の着物

色留袖 いろとめそで 三つ紋 一つ紋

五つ紋色留袖比翼付きは、未婚者でも着用できる第一礼装着ですが、家紋を三つ紋、一つ紋にされて、訪問着感覚で着用される方もいらっしゃいます。三つ紋をいれられる場合は、比翼付きの仕立てにされる傾向があります。一つ紋を入れられる場合は、比翼を付けずにお召になられる傾向が多いです。

 

訪問着 ほうもんぎ

明治時代に洋服の「ビジティングドレス」に相当する着物として考案されました。当初は、三つ紋を入れて着用することが慣例でしたが、現在では家紋を入れない方が一般的になっています。柄付けの特徴は、衿から身頃、肩から袖、衽から身頃、前身頃から後身頃、背中心の全てが縫い目をまたぎ柄が描かれています。招かれて出席する結婚式(親族以外)、茶事、パーティー、入学式、卒業式など華やかな行事に適した装いです。また、既婚者・独身者どちらでも着用することができます。

紬=普段着という考え方から紬訪問着は、大島紬や牛首紬など高価なものでも結婚式など公式の祝い事では着用できないと考えるのが一般的です。

 

色無地 いろむじ 家紋付き

柄が描かれていない一色染めの着物のことをいいます。略礼装で着用される場合は、染め抜き日向紋を入れます。三つ紋にすると準礼装となり用途が限られるため、一つ紋にされることが多いです。もし、八掛がついておらず選ばれる場合は、共色を選ぶようにしてください。帯や和装小物のコーディネイトもあわせやすく、着て行ける用途も多い為、一枚持っていると大変重宝する着物です。

明るい色目のものは、宮参り、七五三、入学式、卒業式、結婚式等のお祝いの行事やお茶会などにも向きますし、鼠色や藍、紺、紫等で暗く沈んだ色目や寒色系のものは、半喪服として通夜や法要などの仏事に着用できます。

普段着として着用される場合は、家紋を入れないのが一般的です。お茶会やお稽古、普段着として楽しみたい場合は、一つ紋の縫い紋を入れられたいする方もいらっしゃいます。

 

江戸小紋 えどこもん 一つ紋

極小模様の型染めで染め上げられる着物のため、遠目から見た感じは色無地を着ているように見えます。江戸時代に武士の裃に用いられたことから発展しました。代表的なものは「鮫小紋」、「行儀」、「角通し」の江戸小紋三役と呼ばれるものや、万筋、線筋などがあります。細かな模様ほど格が高いとされ、準礼装として装う場合は、必ず一つ紋を入れます。略礼装の場合は、家紋をいれなくてもよいとされています。また、八掛も共色を選ぶのが一般的です。 色無地同様にお祝いなどの行事や通夜や法事の色喪服としても着用できる着物です。

 

付下げ つけさげ

付下げと訪問着の一般的な違いは、付下げは柄があうところがなく肩、袖山に柄が向かっている一方付けのものが多く訪問着より柄数を抑えた着物です。付下げの名の由来は、胸、肩、上前、後ろ身頃、袖の柄が、仕立てたときに上下逆にならないように模様をつけ下げたことだそうです。しかし、現在は、衽と前身頃に柄合せがあるものや、前身頃から後身頃まで脇をまたいで柄があるものまであります。付下げ訪問着と言われる場合もあり、柄などによっては略礼装としても充分な品格をもつものもあります。

格としては、元々訪問着に準ずる着物として作られたこともあり訪問着と小紋の中間の着物といえます。訪問着では大げさ過ぎるけれど、小紋では少しもの足りないような場面で着用できるため、仰々しくないので訪問着より着こなしの幅が広く重宝する着物の一枚です。茶道をされている方は、一つ紋の縫い紋を入れられる方が多いです。入学式、卒業式などの付添い、発表会、音楽鑑賞、展覧会、観劇などの社交用に着用できます。

 

 

普段着・外出着 女性の着物

小紋 こもん

小紋の名の由来は、全体に細かい模様が入っていることからです。小紋は上下の方向に関係なく模様が入っています。様々な技法で染められた小紋があり、紅型小紋、絞り小紋、更紗小紋、江戸小紋、京小紋、加賀小紋など多種多様あります。洋服の「ワンピース」を着る感覚で着用できまるといわれることもあります。普段着にむくカジュアルな小紋。江戸小紋や飛び柄で無地場の多い小紋、古典柄で華やかなものは少し改まった場面でも着用できる小紋。お洒落な感覚なシックでモダンな小紋。柄付けや模様も多種多様な着物です。

 

御召 おめし

御召とは、天皇や将軍の御召料として用いられる織物につけられていた総称であり、徳川十一代将軍家斉が好んで着用してため御召といわれるようになったと言われております。先練り先染めの高級な絹織物で、縞御召、絣御召、無地御召、紋御召、縫取御召などがあります。産地として有名なのは、京都の西陣、新潟県の塩沢、十日町、山形県の白鷹、群馬県の桐生などです。

 

紬 つむぎ

絹糸は繭の繊維を引き出して作られます。その際に、生糸を引き出しすことができない品質のくず繭をつぶして真綿にし、真綿より糸を紡ぎだしたものが紬糸である。くず繭には、玉繭、穴あき繭、汚染繭が含まれます。玉繭とは、2頭以上の蚕が一つの繭を作ったものをいいます。紬糸は手で撚りをかけるため太さが均一ではなく、玉繭から作られる糸は2本の糸が複雑に絡まっており、節の多い糸になる。これを玉糸や節糸ともいういます。 また、紬糸には綿を解いて紡いだいわゆる木綿糸もある。 本繭から作る絹糸は表面に絹独特の光沢があるのに対し、紬は本繭ほどの光沢は殆どなく、独特の風合いが特徴です。また、 耐久性に非常に優れており、普段着として着用されていました。 着れば着るほどに生地が柔らかくなり真綿本来の風合いが出てきます。

贅沢禁止令が出された時代には高価な絹物を着ることが禁止された。 町人たちは、絹物をどうしても着たいという願望から、木綿と風合いや見た目が変わない真綿紬を密かに着ることを楽しんでいたという説もあります。 昔は、普段着としての位置付けであったが、現在は外出着やお洒落着として着用されること一般的です。また、無地ものに一つ紋をいれ略礼装に近い装いとして用いられることもあります。

全国各地に産地があり、結城紬、置賜紬、米沢紬、小千谷紬、塩沢紬、久米島紬、大島紬、牛首紬などが有名です。

 

木綿 もめん

木綿は木綿糸を使用した織物です。全国に産地があり有名なものは絣織物です。久留米絣、弓浜絣、伊予絣、備後絣、琉球絣などがあります。

 

麻 あさ

大麻、亜麻、苧麻などから作られる繊維を使用した織物です。亜麻はリネン、苧麻はラミー、大麻はヘンプと呼びます。全国に産地があり有名なものは、越後上布、小千谷縮、能登上布、近江上布、八重山上布、宮古上布などがあります。現在、麻は夏用となっていますが、昔は、丈夫な麻織物は日常着、労働着、綿を入れ冬の衣料としても着られていました。

吸湿性、発散性に優れ、水分を含んだ時の強度があります。水分を含むと生地が硬くなりゴワつく感じになります。また、シワにもなり易い性質があります。着用後は、霧吹きを使用し湿りを与えてたたみ、おもしをしてシワを伸ばすことをお勧めします。繊細な麻織物の着物には高温のアイロンをかけることは出来るだけ避けてください。

 

浴衣 ゆかた

浴衣は、現在、お祭りや花火大会、盆踊りなどでよく着用されています。 元々は外出用の着物ではありませんでした。平安時代に公家などの貴族が入浴する際に着用した湯帷子(麻の単衣着物)という説があります。その後は、使用される生地は麻から木綿に変わり、江戸時代に、入浴後の汗を取るために木綿の着物を着るようになり浴衣と言うようになりました。現在でも、旅館やホテルなどで湯上り用の部屋着、寝巻きとして浴衣が用意されている理由です。

昔は、藍染めの浴衣が定番で、昼の浴衣は紺地に白い柄、夕暮れ時は白地に紺柄を着用されることが一般的でした。現在は、多種多様な色や染め方、柄などあります。お祭り、花火大会など夏のイベントに着用するイメージが定着している浴衣ですが、綿紅梅、綿絽、綿縮、麻縮など見た目が単衣の着物と同じようなものは、夏名古屋帯、博多織の名古屋帯を締め、帯締め、帯揚げなど着物の小物をあわせ、外出用の街着としても着用されています。

今では、夏のイベントに欠かせない衣服として定着しています。ドレスコードで言うとジーンズとTシャツにあたるそうです。ただし生地の種類によっては襦袢を着て、夏素材の名古屋帯や博多織の名古屋帯を締めて、街着程度の外出にも用いられます。